日本ファルコムの名作RPG「英雄伝説」シリーズで、現在に至るまで続く「軌跡」シリーズの始まりとなったのが「英雄伝説VI 空の軌跡」(後に「英雄伝説 空の軌跡 First Chapter」に改称)でした。ゲームシステムやグラフィックなどを一新し、シナリオのボリュームも増やしてそれまでMS-DOS向けの延長線上にあったこのシリーズを一気に現代化したことで人気を博し、「空の軌跡」は「空の軌跡 Second Chapter」との前後編となり、さらに同じ舞台で作られた外伝「英雄伝説 空の軌跡 The 3rd」との三部作となりました。
この後は世界観を共有しつつ舞台を他国に移して「零の軌跡」とその続編「碧の軌跡」、さらに舞台が変わった「閃の軌跡」(計4作)、「閃の軌跡」と次シリーズの間を埋める外伝「創の軌跡」、そして現在展開されている「黎の軌跡」(計2作)とその続編で軌跡シリーズの総決算的な「界の軌跡」(現時点で1作目がリリース)と続いていて、何と第一作の「空の軌跡 First Chapter」発売から20年経過してまだ完結しないという、恐ろしく息の長いシリーズとなっています。
ここまでの13作品は全て大作といわれるレベルのボリュームがあり、元々音楽に定評のある日本ファルコムの作品ということでサウンドトラックや関連音楽作品も膨大なものとなります。純粋にゲーム使用楽曲をそのまま収録したオリジナルサウンドトラックも3作品ともCD2枚組でリリースされていました。それに加えてアレンジバージョン集や音響にこだわったものも用意されているわけです。
そのCD2枚組でリリースされていたオリジナルサウンドトラックを、全てアナログレコード化するというプロジェクトが、米国Streaming Arrow Records社から2023年10月頃に発表されていました。当初の予定では2023年11月末まで予約を受付して、2024年4月頃に購入者の手元に届くように生産するというものでした。私も高額なので随分悩んだのですが、結局締め切り間際に予約をしました。
このレコード化は通常の黒いレコードの他に、柄物のレコードを用意して、3作完全セットは柄物の方でのみ用意するということになっていました。私は音を重視しますので通常の黒が良かったのですが、黒は各タイトル個別に注文することになり、それぞれバラバラに荷造り発送されることから送料が1つずつにかかります。それが安価であればまだ良いのですが、1作ごとに$60以上かかり、3作買うと送料だけで約$190、当時の為替レートで3万円弱もかかってしまうのです。
一方3作セットの方は荷物のサイズが大きくなる分、送料は約$85ですが、それが一度で済むだけまだ安価です。そこでここは妥協して3作セットの方で注文しました。
ところが発送目安だった3月末~4月上旬を大幅に過ぎても一切発送が始まりません。5月末頃になってようやく「レコードの見た目が要求したクオリティに達していなかったので再プレスするため発送が遅れる。作業完了は10月上旬を見込んでいる」とアナウンスがあったのです。だから黒が良かったのですが、まあ手遅れですね。
その後予告の10月上旬を過ぎても全く連絡が無く、11月初旬にようやく「再プレス盤が我々のオフィスに到着した。これから発送作業に入る」と連絡があったのです。その連絡からも2週間ほど待たされてからようやく発送通知があり、11月23日に私の手元に到着しました。2023年11月30日に注文して2024年11月23日着ですから、ほぼ1年かかった計算です。正直夜逃げしたかと思った時期もあったくらいに進捗が報告されない期間は長かったです。とはいえ、入手するためには直接購入以外ではごく一部の輸入レコード店にほんの少し入荷するもの(しかも金額も自分で買った送料込みよりもそこそこ高くなる)を狙うしかなく、なかなかリスクの高い買い物でした。版権元の日本ファルコムはWebショップも運営していますので、少量でも自社通販で取り扱ってくれれば良いのですが…。
コンプリートセットには絵はがきのようなものも同封されていますが、正直これはどうでも良いです。
まずこちらが「空の軌跡 First Chapter」のサントラです。実はこのアルバムに関してはCDでも購入しています。日本ファルコムは正規購入した音源であれば、著作権者を明示した上で動画等で利用して良いという「版権フリー宣言」をしていますので、動画のBGM等に重宝しています。
続いて「空の軌跡 Second Chapter」のサントラです。前作ではエンディングのみだったヴォーカル入り楽曲が本作からオープニング・エンディングの2曲となります。
そして「空の軌跡 The 3rd」です。ゲームとしては外伝、ミニシナリオ集という感じでやや影が薄かったのですが、実は現在進行中の「界の軌跡」にも繋がる伏線がここで登場していたり、シリーズに中では意外と重要な位置を占めます。また本作のオープニング「Cry For Me, Cry For You」
は当時Falcom jdk Bandのライブでも人気の高い楽曲でした。
出来は思ったより良いが、送料も含めとにかく価格がネック
LP12枚ということで全部紹介するのは困難なボリュームですから、概略だけの紹介とします。何しろLP12枚で合計152トラック収録されているわけですからね…。
まずオーディオ的な面について説明しておくと、一応レコード化するに辺りアナログ向きの音になるようリマスターしたということですが、実はSL-1200G+AT-OC9/IIIで再生するとCDとかなり近い傾向の音になります。
日本ファルコムの音楽は「閃の軌跡」シリーズの制作途中から全ての音源を24bit/96kHzのハイレゾで作るよう社内で統一されたため、それ以降の楽曲はオーディオ的に見ても高水準という音で収録されているのですが、生憎「空の軌跡」シリーズはそれより前のシリーズとなるため、一般的なJ-POPレベルの音にとどまります。アナログ化でヴォーカル曲の声に魅力は増しましたが、全体的に大きな変化は感じられません。「空の軌跡 Second Chapter」のエンディング「I Swear」などはアナログの良さがある程度感じられる程度です。
日本ファルコムの音楽はゲーム業界でも完成度に定評があり、オーディオ的な水準の高さも相まって、音元出版が運営する「PhileWeb」でも特集されたことがあります。
ゲーム音楽”はゲームをプレイしていなくても楽しめるのか? 日本ファルコムにズバリ訊いた
ゲーム未プレイのライターがゲームサントラを聴いたらこうなった
主にヴォーカル曲ですが、代表的な楽曲をいくつか紹介しておきますので、ゲーム音楽であるということは一旦忘れて普通に音楽としてお楽しみいただければと思います。
YouTubeでBGM全曲集などを公開している人もいますので、日常のBGMとして流しておくのにも良いのではないかと思います。
よほど思い入れのある人でなければ敢えてアナログ盤で揃えるほどのものでも無いとは思いますが、個人的には「空の軌跡」シリーズの楽曲はかなり気に入っていますので買って後悔はありません。
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購入金額
60,000円
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購入日
2024年11月23日
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購入場所
Streaming Arrow Records
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